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留学スポンサーに海外インターン、多様化する海外留学

2015年10月21日
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スポンサー企業から留学の支援を受ける。留学先でインターンシップ生として企業に勤務する。かつては交換留学が主流だった海外留学が、大きな変貌を遂げている。ハラル対応について研究しアジア12か国を訪れた大学生、三代澤誠氏がこれまで経験してきた留学生活を振り返った。

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アジア12か国でハラル対応の調査を行ってきた三代澤誠氏

私は神奈川県の大学に通う大学4年生です。私は大学3年生と4年生の間に1年間大学を休学し、スポンサー企業から支援を受けて、アジア諸国でハラル対応についての現地調査を行うという形で留学させていただくチャンスに恵まれました。

現地では調査の他にも語学学校に通ったり、インターンシップ生として企業に勤務したりと本当に貴重な経験を積むことができました。こうした海外との関わりが深い大学生活を送っていますが、私はもともと海外に興味があったわけではありません。私が海外を意識するようになったのは、大学に入学してからのことでした。

私は大学で、地方での農漁業支援や震災復旧を行うボランティアサークルに所属していました。そこでの活動を通じて、私は「地方の問題は国内の人間が国内のルートでしか解決しない」という現状に漠然とした問題意識を持つようになりました。当時の私は海外に出たことはなかったのですが、「海外に目を向けて海外の解決策を持ち込んでも良いのではないか」という疑問を抱いていたのです。そしていつしか、その疑問は「海外に出てみたい」という想いへと変化していきました。

海外に出たいと思うようになったものの、私はこれまで海外に行こうなどと考えたこともありませんでした。私は長野県で生まれ育ち、大学で初めて都会に出てきたという状態だったのです。渡航先は安全なのか。1人で行って大丈夫なのか。実家の両親にも散々心配されましたが、最終的にシンガポールへ1か月間短期留学をすることになりました。これが、海外と関わる大学生活のスタートでした。

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黒い菱形のマークがハラルフードを表す「ハラルマーク」

シンガポールでの生活は、日本との違いに驚かされることの連続でした。生活をしていて、勉強をしていて、出会う人間が違う。建物が違う。空気が違う。日本での生活しか知らない私にとって、あらゆるものが違う環境はとても新鮮なものでした。そんな中で、私はこの先ずっと取り組む課題となった「ハラルフード」と出会ったのです。

ある日スーパーで食品を眺めていると、パッケージに付いている良く分からないマークが目に留まりました。店員さんにそのマークは何なのか聞いてみたところ、「ハラルマークだ」と言うのです。「ハラルマーク」と言われても、私にはそれが何を意味するのか分かりません。その店員さんに詳しく聞いてみると、それはムスリム(イスラム教徒)の為の食品で、イスラム法上で食べることが許されている食品「ハラルフード」を表すマークだということが分かりました。ムスリムはイスラム法で豚肉や酒類を口にすることが認められていないので、そういった食材を含んでいない食品だと示すマークが必要になるのです。

このハラルフードとの出会いは、私に強烈な印象を与えました。日本で生活し日本の中で過ごしていたら、このようなマークの存在や必要性に気づくことはないでしょう。「海外に出てみると、現地でしか体験できない学びがある。英語の勉強ではなく、ここにしかない学びがあるんだ」ということを実感したシンガポール生活でした。

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偶然目にしたハラル対応の記事が、その後の学生生活を大きく左右することに

シンガポールから帰国した私は、購読していたマーケティングの専門誌「日経MJ」(旧日経流通新聞)に目を通していました。すると偶然にも、私が帰国してから最初の号にハラル対応についての記事が掲載されていたのです。

私はシンガポールへ渡航するにあたり、「せっかく高いお金を払って海外に出るのだから、何か先に活きるもの、自分がこれから取り組むべきものを見つけてこよう」と考えていました。そして現地でハラルフードと出会い、帰国するとハラル対応についての記事が目に入った。偶然とはいえハラルに興味を持つようになった私は、ハラルに関連する取り組みを行っている方々の話を聞きに行くようになりました。そんな中で、日本が抱えるハラル対応の課題を知ることになったのです。

あるパキスタンの方がおっしゃっていたエピソードなのですが、敬虔なムスリムは日本を訪れる際に母国からカップラーメンを持ち込むそうです。当時の日本にはハラルマークが浸透していませんでしたので、レストランでの食事やスーパーで売られている食品がハラルフードであるかは分かりません。そんな中で頼れるのは、母国から持ち込んだ保存食だけだというのです。

豚肉と酒類が含まれていない料理は沢山あると思うかもしれませんが、それらが原材料や調味料に含まれていてもいけません。醤油・みりん・味噌といった調味料はアルコールを含むものが一般的なので、それらの調味料を使用している料理は口にすることはできません。調理器具や調理過程、例えば揚げ物の油も別にしなければならず、豚肉ではない食肉であっても、その殺傷方法や輸送方法には様々な規則が設けられています。こうした条件を考慮すると、ハラルマークが浸透していない日本にはムスリムが安心して食べられる食品がほとんど存在しなかったのです。

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訪日外国人が増える中、ハラル対応は他人事ではなくなってきている

この話を聞いて私は唖然としました。「日本といえば寿司じゃないの?天ぷらじゃないの?」まさか日本にそんな課題があるとは思ってもみなかった私は、この話を聞いた時に「自分がこの先何かに取り組むなら、このハラル対応の課題に取り組みたい」と考えるようになりました。それからの私は、より一層ハラルについて調べたり、何か取り組みを行っている方々に会いに行くようになりました。そうした中で、私自身も身をもってハラル対応の問題に直面することになったのです。

ある日友人から、マレーシアからの留学生を浅草観光に連れていくので一緒に案内してほしいと言われました。その留学生はムスリムで、友人はハラルについてのアドバイスを求めるために私に声をかけてくれたようです。浅草は外国人観光客が多く訪れる、東京有数の観光地です。私は浅草ならハラルフードを扱っているお店があるはずだと思い案内を引き受けたのですが、レストランに行っても屋台に行ってもハラルフードは見つかりませんでした。店の方にハラルフードを扱っているか聞いてみても「ハラルって何ですか?」という状態だったのです。

最終的に私たちが行き着いた先は、コンビニエンスストアでした。商品の原材料を片っ端からチェックし、ハラルフードを探したのです。その結果、何とか確実にハラルである食品が2点見つかりました。それは、塩おにぎりとバナナでした。この現実を前にして、私は「この現状を変えないと、彼らをがっかりさせてしまうな」と思ったのです。