episode-image

グッドデザイン賞受賞の銭湯が目指す、これからの銭湯

2015年12月29日
episode-kazama-yukio-1

東京都練馬区の銭湯「天然温泉久松湯」入浴料460円の公衆浴場でありながらグッドデザイン賞を受賞し、壁画に代わってプロジェクションマッピングを導入する斬新な銭湯だ。次々と革新的な取り組みを行う2代目社長の風間幸雄氏に、これからの銭湯のあり方を聞いた。

episode-kazama-yukio-2

東京都練馬区桜台の銭湯「天然温泉 久松湯」

私は東京都練馬区桜台で公衆浴場(銭湯)「天然温泉 久松湯」を営んでいます。久松湯は私の父である風間久松(かざま きゅうまつ)が開業した銭湯でした。それを2014年5月にリニューアルオープンしたのが、現在の「天然温泉 久松湯」です。

久松湯が開業したのは1956年。大手メーカーに勤務していた父が、会社勤めを辞めて「地域を喜ばせる仕事がしたい」とはじめた銭湯です。私は久松湯開業の翌年1957年に生まれ、小さい頃から父の銭湯を手伝ってきました。当時は一般家庭に風呂が普及しておらず、久松湯は街の風呂屋として多くのお客様に支持されていました。

ところが、1970年代半ばから一般家庭に風呂が普及しはじめると、状況が一変します。家庭風呂が普及するにつれ、街の風呂屋である銭湯に足を運ぶ人が少なくなっていったのです。練馬区では全盛期に90軒近くあった銭湯も、30軒を下回るまでになりました。時代の変化とともに、大きい・広いだけの銭湯ではお客様を呼べなくなってしまったのです。

episode-kazama-yukio-3

シンプルかつ現代的なつくりのカウンターと待合スペース

久松湯もお客様が入りやすい銭湯を目指し、古くなった建物を改修し、番台を廃止してカウンターとロッカーを導入しました。しかし時代の変化は早いもので、一般家庭に風呂が普及した後はスーパー銭湯やフィットネスクラブの浴室といった、銭湯以外にも外で入浴する選択肢が増えてきました。外で入浴するなら、高いお金を払って好きなところへ行くようになったのです。

お客様が離れていく現状を前にして、私たちは打開策を考えました。そして出した答えは、天然温泉。久松湯は地下100mほどから汲み上げた地下水を温めて提供していたのですが、それに加えて、天然温泉にも入浴してもらおうと考えたのです。

「日本人は天然温泉が好きだし、家庭用の風呂は普及しても家庭用の天然温泉が普及することはないだろう。やるなら天然温泉しかない!」こうして私たちは、久松湯再建のために温泉を掘削することにしたのです。